アンフルラージュとアブソリュート
アンフルラージュは、中世から20世紀の初頭まで、南フランスのグラースで行われていた、香りの抽出方法です。
木枠にはめ込んだガラス板に、牛脂やラードなどの油脂を塗り、その上に花を並べて、揮発した香り成分を集めます。花は数日に一度取り替え、数週間から数か月かけて香りを抽出します。香りを抽出した油脂はポマードとよばれ、そのまま使われることもありますが、アルコールに溶かして、芳香成分だけを取り出したものをアブソリュートといいます。
アンフルラージュは、熱をかけずに自然に揮発した香り成分だけを抽出できるので、繊細で熱分解しやすい花の香りなどをそのまま抽出できる優れた方法です。特に、バラ、クチナシ、ジャスミン、チュベローズ、キンモクセイ、水仙、蝋梅、桜など、水蒸気蒸留ではうまく抽出できないデリケートな香りの抽出には最適の方法です。
しかし、アンフルラージュは大変手間のかかる方法で、製造コストが高いため、現在では、商業的にほとんど使われることがなくなりました。
有機溶剤抽出法は、揮発性有機溶剤で花の香りを抽出する方法で、アンフルラージュに代わって用いられるようになりました。やはり熱をかけないので、自然の香りに近い香り(アブソリュート)が抽出できます。ただし、揮発性有機溶剤を使うので、化学や安全に関する正しい知識と抽出機材が必要で、家庭で行うには難易度が高い方法です。
いずれの方法も、自然の香りをそのまま抽出できる方法ですが、このような本当にいい香りは、なかなか入手することが難しいのが現状です。